物語の舞台は、遠い宇宙の彼方に存在する緑豊かな未踏の惑星「フェリシア」。長旅の末に不時着した人間の宇宙飛行士・ハヤトは、そこに高度な知性と文明を持ち、二足歩行で穏やかに暮らす猫型種族「フェリシアン」を発見します。彼らは言語を解し、人間を一切傷つけることなく、手厚く保護し「主(あるじ)」としてもてなす姿勢を見せます。
作中に登場するキャラクターの役割配置も秀逸です。冷静沈着で知的好奇心の強い主人公・ハヤト、フェリシアン側の最高評議員を務める白猫の「ノワール」、そして人間への盲目的な奉仕を申し出る少女風の三毛猫「ミィ」。人間側は「自分たちが崇拝され、愛されている」と疑いなく信じ込み、争いのない理想郷での自堕落な生活に溺れていきます。
しかし、物語が進むにつれて違和感が浮き彫りになります。人間たちの身の回りの世話は完璧である一方、彼らは一切の科学技術へのアクセスや知的生活を剥奪され、「ただ食べて、眠り、可愛がられるだけの存在」へと飼い慣らされていくのです。この緻密なプロットが、読者にじわじわとした精神的恐怖を与えます。