インターネット上のヘルスケア情報やSNSには、カルシウムに関する危険な思い込みが氾濫している。専門医の視点から、特に是正すべき3つの重大な誤解を暴いていく。
誤解1:「手足がしびれたら市販のカルシウムサプリを大量に飲めばよい」という罠
「カルシウムが足りないならサプリで補えば安心」という短絡的な自己判断は極めて危険だ。低カルシウム血症の根本原因が副甲状腺機能低下症やビタミンD欠乏症である場合、体内の輸送・吸収システム自体が麻痺しているため、市販のサプリメント(炭酸カルシウム等)を単独で大量に経口摂取しても腸管からほとんど吸収されない。それどころか、過剰なミネラルが消化管に滞留して激しい便秘や胃腸障害を引き起こすばかりか、正確な血液検査データを歪め、真の原因究明を遅らせる原因となる。
誤解2:「骨粗鬆症(骨のカルシウム不足)と同じ病気である」という混同
一般に「カルシウム不足」と聞くと骨粗鬆症を連想しがちだが、病態生理学的には全く別物である。骨粗鬆症は「骨密度」の低下であり、血中カルシウム濃度は骨からカルシウムを溶出させて正常に保たれるため、血液検査では異常が出ないことが多い。一方、低カルシウム血症は「血液中を流れるカルシウム」そのものの枯渇であり、心臓拍動や神経伝達に直接関わるため、骨粗鬆症とは比較にならないほど急性かつ致死的な危険を伴う。骨が丈夫な人であっても低カルシウム血症は発症する。
誤解3:「ビタミンDさえ摂っていれば絶対に下がらない」という過信
近年、健康ブームでビタミンDサプリメントの利用者が急増している。しかし、体外から摂取した天然型ビタミンD(コレカルシフェロール)は、肝臓で25位、腎臓で1α位が水酸化されて初めて活性型ビタミンDへと転換される。つまり、腎不全の患者やPTH分泌不全の患者においては、いくら市販のビタミンDを飲んでも活性化されず、血中濃度を押し上げることはできない。医療機関で処方される医療用「活性型ビタミンD3製剤(アルファカルシドールやカルシトリオール)」による精密な補充が必要不可欠なのだ。