1993年から1996年にかけて放送されたテレビアニメ版『SLAM DUNK』において、流川楓を演じた緑川光の存在感は唯一無二でした。当時20代半ばだった緑川は、クールで感情を表に出さない流川の内面に宿る鋭利な闘争心を、艶のある二枚目ボイスで具現化しました。「どあほう」という象徴的な台詞や、冷徹さの奥にある少年らしい意地をスタイリッシュに表現し、アニメキャラクターとしての流川楓のパブリックイメージを決定づけた立役者です。
一方、映画『THE FIRST SLAM DUNK』で抜擢された神尾晋一郎は、演技のアプローチを「キャラクターの様式美」から「極限状態でコートに立つ高校生アスリートの生々しさ」へと完全にシフトさせました。公式発表資料やメイキングインタビューによると、神尾は台詞を明瞭に聞かせる従来のアニメ的な発声を意図的に削ぎ落とし、激しいダッシュに伴う乱れた呼吸、摩擦音、独り言のような低い呟きを徹底して追求しています。YouTube等で公開された公式インタビューでも、神尾自身が「劇中のダンクシーンでは、単に声を張るのではなく、身体にかかる重力や踏み切りの反動を全身で意識して息を吐き出した」と語っている通り、演技というよりもアスリートの生理現象そのものをマイクに叩き込む手法が採られました。