現在でこそ映画史に残る大成功と称えられる本作ですが、公開1か月前となる2022年11月4日のキャスト発表特番配信直後は、インターネット上を中心に猛烈な批判と炎上が巻き起こりました。
騒動が拡大した最大の火種は、キャスティングそのもの以上に「情報開示のタイミング」にありました。東映アニメーション側がムビチケ(前売券)の先行販売を開始した後にキャストの一新を発表したため、SNSや掲示板では「昔の声で山王戦が見られると思って買ったのに裏切られた」「なぜチケットを売る前に公表しなかったのか」といった怒りの声が噴出。映画レビューサイトや公式SNSのコメント欄には、失望と不満の声が連日投稿される事態に発展しました。
しかし、2022年12月3日の劇場公開を迎えると、事態は劇的な大反転を見せます。初日初回の上映が終わった直後から、劇場を訪れた観客による「想像を絶する傑作」「声の違和感は開始数分で消え去った」という口コミが爆発的に拡散したのです。過剰な説明台詞を排除し、息を呑むような試合のリアルスピードを再現した音響演出の中で、神尾晋一郎の演じる流川は完璧にピースとして嵌まっていました。試合終盤、言葉を交わさずとも桜木花道と背中を預け合うシークエンスにおける神尾の短い息遣いと咆哮は、多くの旧来ファンをも唸らせ、公開前の不信感を力づくで感動へと塗り替えました。