主人公・野比のび太は、従来のヒーロー像からはほど遠い。勉強はできず、運動神経も壊滅的、怠惰ですぐに他力本願になる。しかし、この「欠陥だらけの少年」こそが、作品を不朽の名作たらしめている核にほかならない。
完璧な主人公が八面六臂の活躍を見せる冒険譚はごまんとある。だが、挫折し、ズルをして、痛い目に遭い、それでも時折見せる土壇場の勇気と優しさ。視聴者はのび太の中に、自分自身の弱さと秘められた可能性を同時に目撃する。過度な効率主義と自己責任論が渦巻く現代の競争社会において、のび太の存在感は単なる共感を超え、疲弊した現代人への救済として機能している。