主演に抜擢されたと目されるのは、世界最高峰の演技派として名高い役所広司だ。カンヌ国際映画祭をはじめ世界中で喝采を浴びてきた名優が、本作で挑むのはこれまでのキャリアの集大成とも言える難役である。
ジャンルの垣根を軽々と飛び越える点も、本作の異例な魅力だ。重厚で神経を研ぎ澄ますサスペンス・スリラーの緊張感から、突如として壮大なスケールのSFファンタジーへとシフトする独特の構造。役所広司の圧倒的な存在感と狂気を孕んだ目線が、リアリティと非現実の境目を曖昧にしていく。人間心理の深淵を抉り出す迫真の芝居は、観る者の心臓を直接掴み取るような迫力を秘めている。