日本人の誰もが「山下清=おにぎり」と連想するほどの強力なインパクトを持つこの言葉ですが、結論から言うと、山下清本人の口から発せられた言葉ではありません。本人が遺した膨大な『放浪日記』や肉声インタビューなどの一次資料を綿密に精査しても、「おにぎりが食べたいんだな」という言い回しは一行も記されていないのが事実です。
実際の山下清の話し方は、独特の吃音や訥弁(とつべん)交じりではあったものの、文末に「〜なんだな」と毎回付けるような癖はありませんでした。ではなぜ、実在の人物の言葉としてここまで強固に信じ込まれるようになったのでしょうか。その背景には、1980年代に大ヒットを記録した国民的テレビドラマの影響があります。