冨樫義博氏のストーリーテリングにおける最大の特徴は、何話も先、あるいは何巻も先に見える壮大な伏線の張り巡らせ方にある。「そりゃ悪手じゃろ」というフレーズ一つをとっても、実は将棋や囲碁、そして作中ゲームである軍儀の定石と崩しのロジックが完璧に組み込まれている。キャラクターが発する軽妙なセリフの裏に、徹底されたゲーム理論とキャラクター心理が隠されているのだ。
現在、物語の舞台は暗黒大陸へと向かう暗黒大陸編・王位継承戦へと移行しているが、キメラ=アント篇で提示された「外の世界」のリスクや、人類の業というテーマは今なお根底に脈打っている。会長選挙篇でのゴンの復活、ジンの発言、そして暗黒大陸から持ち込まれたとされる五大厄災の存在。これらすべての基盤となったのが、ネテロとメルエムの死闘であり、冨樫氏が仕掛けた多層的な世界観の結実と言えるだろう。