『ドクターX』の人間関係は、一貫して「孤高のフリーランス(神原名医紹介所)」対「巨大な白い巨塔(東帝大学病院などの医局組織)」という明快な二項対立を軸に構築されています。組織の縛りを嫌い、己の腕一本で患者の命を救う大門未知子に対し、名誉や出世、保身のために群れる医師たちが巻き起こす化学反応こそが、本シリーズ最大の醍醐味でした。
物語の絶対的ホームグラウンドである「神原名医紹介所」では、麻酔科医として未知子と唯一無二のバディを組む城之内博美(内田有紀)、そして未知子の師匠であり法外なメロン代と請求書を突きつける神原晶(岸部一徳)が盤石の布陣を敷いています。プライベートでは麻雀を囲み、銭湯で湯に浸かり、軽口を叩き合いながらも、オペ室に入れば一瞬の呼吸の乱れも許さないプロフェッショナル同士の信頼関係は、多くの視聴者を魅了しました。
一方で、敵対しながらもどこか未知子に惹かれ、振り回され続けたのが医局の医師たちです。「腹腔鏡の魔術師」の異名を持ちながら金と権力に弱い加地秀樹(勝村政信)、未知子への対抗心と組織の板挟みで苦悶する海老名敬(遠藤憲一)、そして初期シリーズでへたれ新米医師として登場し後に未知子の影響を受けて成長を遂げた森本光(田中圭)や原守(鈴木浩介)。彼らは大門未知子という異端児と交錯することで、医師としての初心や良心を揺さぶられ、コミカルかつ哀愁に満ちた人間ドラマを紡ぎ出しました。