ネット上の投資情報やSNSの言説で散見される最大の誤解は、「日銀が利上げを行えば、すぐに1ドル=120円や100円台に戻る」という短絡的なシナリオです。この見立てには2つの重要な盲点が存在します。
第1に、絶対的な金利水準の格差です。日銀が政策金利を0.75%や1.0%まで引き上げ、FRBが政策金利を3.5%〜4.0%程度まで引き下げたとしても、日米間には依然として2.5%〜3.0%程度の明確な金利差が残ります。金利差が存在する限り、ドルを保有することで得られるインカムゲインの優位性は完全に消滅するわけではありません。
第2に、日本の構造的な貿易・サービス収支赤字です。デジタル関連サービス(クラウド利用料や広告費、動画配信プラットフォームへの支払い)に伴う「デジタル赤字」は年間数兆円規模に達しており、日本企業による経常的な「実需の円売り・ドル買い」が相場の下値を支える構造が定着しています。過去の円高局面のような劇的な回帰が起こりにくい土台が形成されている点に注意が必要です。