海の中でクラゲが爆発的に増殖する背景には、単一の要素ではなく複数の環境要因が連鎖する「複合的な生態系の崩壊」が存在します。最も大きな引き金となっているのが、地球温暖化に伴う海水温の上昇です。多くのクラゲは水温が高まることで代謝が活性化し、無性生殖を行うポリプ(幼生)からエフィラ(稚クラゲ)へと変態するストロビレーションのサイクルが劇的に加速します。
さらに見逃せないのが、海の生態ピラミッドにおける競争関係の変化です。人間による過剰な漁獲圧によって、クラゲと同じ動物プランクトンを捕食するマイワシやアジなどの小型浮魚類が減少しました。その結果、プランクトンを独占できるようになったクラゲが急速に勢力を拡大しています。
また、港湾整備や護岸工事によって海中に増え続けたコンクリート護岸やテトラポッドは、クラゲのポリプにとって天敵から身を隠しながら越冬・増殖できる「絶好の足場」を提供することになりました。生活排水などに起因する沿岸部の富栄養化と、それに伴う貧酸素水塊の形成も、酸素要求量の少ないタフなクラゲにとって有利に働いています。