費用を浮かせたい一心で、空の巣を自力で撤去しようとする人が直面するのが、目に見えない衛生上の猛烈なリスクです。インターネット上では「ほうきで払ってゴミ袋に入れるだけ」といった安易な体験談も見受けられますが、害鳥の巣は病原菌と寄生虫の培養基のような状態になっています。
実際に、大手駆除業者の現場技術員が遭遇した事例では、築12年のマンションに住む40代男性がマスクをつけずにベランダの鳩の巣を撤去したところ、乾燥した糞の粉塵を大量に吸い込み、数日後に40度近い高熱と激しい咳で救急搬送されました。診断名は鳩の糞に含まれるカビが原因で発症する「肺クリプトコッカス症」でした。鳥類の糞や巣には、重篤な肺炎を引き起こすオウム病クラミジアや、サルモネラ菌が高確率で潜伏しています。
さらに恐ろしいのが、巣に寄生している吸血性の「トリサシダニ」です。雛が巣立った直後、吸血対象を失った数千から数万匹のダニは、新たな宿主を求めてサッシの隙間や通気口から室内へと一斉に這い出します。自力撤去の際に巣を不用意に揺らすと、衣服や腕にダニが無数に付着し、全身に激しい発疹と耐え難い痒みを引き起こします。
もし空の巣を自力で撤去せざるを得ない場合は、以下の完全防護体制が最低条件となります。
- 防塵マスク(N95規格以上推奨)と保護メガネ、ゴム手袋、使い捨てレインコートの着用
- 作業前に次亜塩素酸ナトリウム液や消毒用エタノールを巣全体にたっぷり噴霧し、粉塵の飛散を防止
- 巣を取り外した後はビニール袋を二重にして密閉廃棄し、周辺部を塩素系洗剤で徹底的にブラッシング洗浄
- 使用した衣服は密閉して廃棄するか、直ちに高温(60度以上)で熱湯消毒
少しでも体調不良やアレルギー体質に不安がある場合、あるいは巣が高い場所にある場合は、自力での作業は極めて危険であり、専門業者に委託すべき領域です。