医療現場において今もっとも注目されているのが、アイコスの発がん性物質リスクと呼吸器系への慢性的なダメージです。これまでのたばこ研究は紙巻きタバコの長期疫学データが主流でしたが、加熱式タバコが市場に登場して10年以上が経過し、独立した学術機関による精緻な研究成果が続々と報告されています。
ジャーナリストの石田雅彦氏がYahoo!ニュースのエキスパート記事等でも紹介した横浜市立大学の研究チームによる報告では、アイコスから抽出されたエアロゾル成分が、ヒトの肺上皮細胞やがん細胞に対してどのような生体応答を引き起こすかが詳細に解析されました。その結果、アイコスのエアロゾル抽出物は細胞の生存率を低下させるだけでなく、特定の条件下においてがん細胞の遊走能や増殖シグナルを活性化させることが判明しています。
さらに、アイコスの肺への影響も見過ごせません。燃焼煙とは異なり、アイコスの蒸気にはプロピレングリコールや植物性グリセリンなどの基剤が高濃度に含まれています。これらは食品添加物としては安全が確認されているものの、超高温で気化させ、微小粒子として肺の最深部にある肺胞に吸入した際の長期的な生体反応については未知の領域が残されています。国立がん研究センターなどの専門機関は、「加熱式タバコのエアロゾル吸入は、気道局所の急性炎症や気道過敏性の亢進を引き起こし、将来的な慢性閉塞性肺疾患(COPD)の発症母地になり得る」として厳格な監視を続けています。
タバコ特有の強力な発がん性物質である「タバコ特有ニトロソアミン(NNKやNNN)」は、アイコスでも低濃度ながら確実に検出されています。発がん性物質には「これ以下の量ならがんにならない」という安全域(閾値)が存在しないため、吸入量が減ったからといって発がんリスクが消失したと考えるのは科学的誤りです。