猫の多発性嚢胞腎は、腎臓の尿細管上皮細胞の異常増殖によって液体を溜め込んだ嚢胞が無数に形成される遺伝性疾患です。原因となるのは「PKD1遺伝子」の変異であり、親猫のどちらか一方がこの変異遺伝子を持っている場合、子猫への遺伝確率は50%に達する常染色体優性遺伝の形式をとります。
歴史的にペルシャ猫およびその血統を引くエキゾチックショートヘア、ヒマラヤン、ブリティッシュショートヘア、スコティッシュフォールドなどに多発してきました。かつてペルシャ猫種における変異保有率は約30〜40%という極めて高い水準にありましたが、国際的なブリーディングプログラムやスクリーニング検査の導入によって、近年は健全な血統管理が進められています。
それでもなお、無計画な繁殖や未検査の交配によって変異を受け継ぐ個体は後を絶ちません。両親から変異遺伝子を1つずつ受け継ぐ「ホモ接合体」の場合は胎盤内で死亡するか出生直後に死亡するため、臨床現場で診察を受ける罹患猫はすべてヘテロ接合体(変異遺伝子を1つ保有)となります。生まれた瞬間から小さな嚢胞を持っていますが、若齢期には腎機能が保たれているため、外見上は健康そのものに見える点がこの病気の潜伏性の高さを示しています。