ファンの間で今なお語り継がれる「クリスピークリームドーナツの九州撤退はなぜ起きたのか」という疑問。2016年、同社はアミュプラザ博多店や天神地下街店、マリノアシティ福岡店に加え、熊本、大分、鹿児島、佐賀など九州各県の全店舗を短期間で一斉閉鎖しました。当時の関係者証言や経済分析から浮かび上がるクリスピークリームドーナツ福岡撤退の理由には、3つの明確な構造問題が存在していました。
第1の要因は、「ドーナツシアター」を併設した超大型店舗の過重な固定費です。ガラス越しにドーナツが揚がる様子を見せる製造ラインは圧倒的な集客力を誇った反面、広大な床面積と高額な家賃、専用設備の減価償却費が重くのしかかりました。ブームの熱狂期には日商数百万円を叩き出したものの、客足が落ち着いた瞬間に損益分岐点を大きく割り込む構造になっていたのです。
第2の要因は、「お土産需要」への過度な依存とリピート頻度の低下です。オープン当初は「赤く光るHOT Light」を目当てに1ダース(12個入り)のボックスを複数箱購入する客が列をなしましたが、日常的な軽食としての定着が遅れ、家庭用のおやつとしては甘さやカロリーの高さが日常消費のハードルとなりました。
第3の要因は、2015年前後に巻き起こったコンビニ各社のドーナツ戦争です。大手コンビニエンスストアがレジ横什器で1個100円前後のドーナツを展開し、手軽なカフェ需要を奪取。わざわざ都心部の専門店に足を運んで並ぶという動機付けが急速に薄れていきました。