UNHCRの任期を終えた後も、彼女の熱情が衰えることはなかった。2003年から国際協力機構(JICA)の理事長に就任した緒方氏は、日本の開発援助(ODA)のあり方を劇的に転換させた。官僚主義的な手続きに忙殺されていた組織に「現場主義」の風を吹き込み、支援の意思決定を現地へ大幅に移管したのだ。
アフガニスタンの復興支援やアフリカでの貧困撲滅プロジェクトにおいて、緊急人道支援と長期的開発支援のシームレスな統合を唱導。単に物資を与えるのではなく、地域社会が自立するための基盤作りに注力した。
「日本はもっと世界の問題に当事者意識を持つべきだ」という彼女の叱咤は、内向きになりがちだった日本の外交政策や国民意識に大きな一石を投じた。JICAでの改革は、現代の日本の国際協力の基盤として今なお生き続けている。