「骨を強くするために牛乳を飲みなさい」。親や教師からそう教え込まれて育った世代にとって、近年の疫学調査が示す結果は受け入れがたいものかもしれない。しかし、データは残酷なまでに明確だ。
栄養疫学の権威として知られるハーバード公衆衛生大学院(Harvard T.H. Chan School of Public Health)のウォルター・ウィレット(Walter Willett)教授らの大規模追跡調査は、衝撃的な結論を導き出した。数十万人規模のデータを解析した結果、牛乳の摂取量が多い集団において、大腿骨近位部骨折の発生率低下が認められなかったのだ。それどころか、乳製品の消費量が極めて高い国ほど、高齢者の骨折率が高いという「カルシウム・パラドックス」と呼ばれる逆転現象さえ観察されている。
過剰な動物性タンパク質の摂取が体液を酸性に傾け、それを中和するために骨からカルシウムが溶け出す「脱灰」を招くという仮説や、カルシウムとマグネシウムの摂取バランスの崩壊が骨代謝に悪影響を及ぼすメカニズムが指摘されている。骨を守るための習慣が、皮肉にも骨を脆弱にしていた可能性が浮き彫りになった。