高血糖状態が慢性化すると、皮膚は段階的にその表情を変えていく。まず現れやすいのが、病変部が赤く腫れるわけでもないのに猛烈に痒む糖尿病性皮膚掻痒症だ。皮膚科の診察室で撮影される臨床症例写真を確認すると、発疹のない「無傷の肌」を爪で掻き壊して生じた線状の傷跡(掻破痕)が広範囲に記録されていることが多い。
一方で、明確な視覚的異常を伴う病変も少なくない。脛骨部(すね)に好発する褐色斑は、直径数ミリから1センチ程度の円形または不規則なシミ状で現れ、最初は薄い赤色、やがて萎縮を伴う色素沈着へと変貌する。これらは「糖尿病性デルモパシー」と呼ばれ、毛細血管の血流不全を雄弁に物語るマーカーである。鏡で自身の皮膚を観察し、左右非対称に茶褐色の斑点が散らばっていないか確認する作業は、高血糖の早期覚知に直結する。
さらに見逃せないのが首の後ろや脇の下だ。皮膚がまるでビロードのように厚く黒ずんで見える場合、それは単なる摩擦による黒ずみではない。これらの視覚的特徴を自身の肌と照らし合わせることは、潜在的な代謝異常を暴く第一歩となる。