ホームに響く独特のリズムを帯びた呼び声。折尾の代名詞といえば、株式会社東筑軒が誇る名物駅弁「かしわめし」だ。鶏ガラと醤油ベースの秘伝の出汁で炊き上げたご飯に、甘辛く煮た鶏肉、錦糸卵、刻み海苔が三色に美しく敷き詰められたその味は、時代を超えて旅人の舌を魅了し続けている。
全国の鉄道駅で姿を消しつつある立ち売り販売が、折尾ではいまなお健在だ。首から掛けた木箱から手渡しされる駅弁。首掛け紐の擦れる音や売り子とのわずかな言葉の交わし合いが、慌ただしい移動の中に温かな旅情を取り戻してくれる。
店舗販売の拡充や駅構内での利便性向上とともに、この無形文化とも言える伝統的な販売形態を守り続ける姿勢は、全国の鉄道ファンからも熱い視線を集める。変わらない味と変わらない情景。新しくなった高架ホームに響く売り声は、折尾が失わなかった心の原風景だ。