大手レシピサイトやSNSの投稿を綿密にリサーチすると、調理手順における危険な行動パターンが浮き彫りになってきます。その代表格が「ジップロックなど密封袋内の空気残り」と「調理完了後の湯煎内放置」です。
空気は水に比べて熱伝導率が極めて低いため、ジップロック内に大きな空気だまりがあると、その部分の肉表面に熱が伝わらず局所的な加熱不足(コールドスポット)が発生します。現場の料理人は必ず、食材を入れた耐熱密封袋をゆっくりと水の中に沈めながら水圧を利用して空気を徹底的に追い出す「水圧脱気法」を実践しています。袋の耐熱性能にも注意が必要で、ポリエチレン製の安価な袋は融点や耐熱温度が70〜80度と低く、水漏れや破断による肉汁流出の惨事を招くため、公認された厚手の耐熱袋(旭化成ジップロックの耐熱温度は100度)の選定が欠かせません。
さらに深刻なのが、「調理タイマーが鳴った後、保温容器の中にそのまま何時間も放置する」という行為です。30度から50度の温度帯は、ウェルシュ菌やセレウス菌などの芽胞形成菌を含む食中毒菌が最も爆発的に増殖する魔の時間帯です。タイマー終了後に電源が落ちた湯の中に肉を放置することは、菌の培養器に肉を浸しているのと同義です。調理が完了した瞬間に取り出し、すぐに食さない場合は「袋ごと大量の氷水に沈めて中心まで急速冷却」を行い、速やかに冷蔵室(4度以下)へ移行させることが鉄則です。