地上波での放送が途絶えた結果、インターネット上の掲示板やSNSでは様々な憶測が事実のように語り継がれる事態となりました。その代表例が「サクマ式ドロップスが売れなくなるため、菓子メーカーが抗議して放送を差し止めさせた」という言説です。
この噂は明白な虚偽(デマ)です。劇中で節子が肌身離さず持っていた赤い缶でおなじみの「サクマ式ドロップス」を製造していた佐久間製菓株式会社は、むしろ映画公開以降、作品の絵柄をあしらった復刻版コラボレーション缶を長年公式に製造・販売し、ファンから深く愛されていました。佐久間製菓は2023年1月に原材料費の高騰や後継者不足などを理由に廃業・会社解散となりましたが、これは経営判断による歴史の幕引きであり、作品の地上波放送中止とは因果関係が一切ありません。メーカーからの抗議による封印説は、ネット上で無根拠に増殖した都市伝説に過ぎません。
もうひとつの誤解が「西宮の叔母の描写に対する抗議で放送できない」という説です。清太と節子に冷たく当たり、雑炊の米を差別し、最終的に2人を防空壕へ追い出す契機を作った未亡人の叔母。この人物に対する視聴者の反発がクレームになったという噂ですが、これも放映中止の直接原因ではありません。むしろ後述するように、この叔母の対応は戦時下の逼迫した食糧事情における「共同体の冷徹な現実」を描いたものであり、制作陣が意図した人間ドラマの根幹でした。