鑑賞者が足を踏み入れてまず驚かされるのが、緻密に計算されたシスティーナ礼拝堂天井画の構図です。平坦ではないヴォールト(曲面)天井に対し、ミケランジェロは架空の建築フレームをだまし絵(トロンプ・ルイユ)のように描き込み、秩序ある空間構造を作り上げました。
天井の中央部を貫く主軸には、『旧約聖書 創世記』から選ばれた以下の9つの場面が描かれています。
1. 光と闇の分離
2. 太陽、月、植物の創造
3. 水と地の分離
4. アダムの創造
5. エバの創造
6. 原罪と楽園追放
7. ノアの感謝の捧げ物
8. 大洪水
9. ノアの泥酔
神が天地を創生する壮大な場面から、人類の堕落と再生に至るドラマが連続して展開され、これを取り囲むように預言者や巫女、キリストの先祖たちの姿が配置されています。作品全体に込められたシスティーナ礼拝堂天井画の意味とは、単なる聖書の挿絵にとどまらず、「神と人間の契約、そして救済への希求」という深遠な神学体系の可視化に他なりません。