では、論理的な正論はさておき、現実問題として東京や首都圏に原子力発電所を新設することは可能なのか。結論から言えば、日本の法規制および立地工学上の制約から極めて困難です。最大の障壁となっているのが、原子力規制委員会が厳格に適用する原子炉立地審査指針の存在です。
同指針では、重大事故が発生した場合に公衆の安全を確保するため、発電所周辺に一定の「非居住区域」を設け、さらにその外側に「低人口地帯」を確保することが義務付けられています。数千万人規模の人口が超過密状態で密集する東京電力管内の首都圏中心部では、この要件を満たす広大な敷地を確保すること自体が物理的に不可能です。
さらに見逃せないのが冷却水の問題です。原発は熱効率の関係上、発生させた熱エネルギーの約3分の2を海水へ放出します。外洋に面した沿岸部とは異なり、水流の滞留しやすい内海である東京湾では、大量の温排水によって水温が急上昇し、東京湾全体の海洋生態系を根底から狂わせる危険性があります。「送電ロスの低減」という純工学的なメリットを遥かに凌駕する致命的な立地リスクが横たわっているのが実情です。