本作の魅力を語る上で避けて通れないのが、主人公である小山門出と中川凰蘭の特異な関係性です。思春期の少女たちに見られる単なる親友関係の枠組みを完全に超越したふたりの結びつきは、現代社会における「愛」や「共依存」のあり方を鋭く問い直します。
小山門出は、真面目で常識的な女子高生として登場しながらも、内面には母親との冷え切った関係や社会への強い諦念、そして時に他者へ向ける冷酷な攻撃性を秘めています。一方の中川凰蘭(おんたん)は、奇声を発し、周囲を煙に巻く言動を繰り返すトラブルメーカーに見えながら、その実態は門出の心の崩壊を食い止めるために自らの人生すべてを捧げた「殉教者」でした。門出の破滅願望をおんたんが己の狂気で包み込み、おんたんの過酷な献身を門出が無自覚な執着で繋ぎ止める。互いが互いの絶対的な世界の中心であるというこの関係性は、倫理の彼岸にある究極の純愛とも呼べます。
この極限のダイナミズムに生命を吹き込んだのが、アニメ映画版における幾田りら(小山門出役)とあの(中川凰蘭役)というキャスティングでした。発表当初は著名アーティストの起用に対して一部で懸念の声も上がりましたが、公開とその後の配信によって評価は一変。「凰蘭の複雑な内面と狂騒を表現できるのは世界中であのしか存在しない」「門出の透明感と底知れぬ影を幾田りらが見事に演じ切った」と、映画関係者や原作ファンから絶賛の嵐が巻き起こりました。
さらに、映画前章の主題歌「絶絶絶絶対聖域」(ano feat. 幾田りら)、後章の主題歌「青春謳歌」(幾田りら feat. ano)という相互フィーチャリング楽曲は、作品の文脈と完璧にシンクロ。崩壊する世界の中で叫ばれる聖域と、かけがえのない青春への賛歌は、ストリーミングチャートを席巻し、作品の熱量を音楽面からも永遠のものとして決定づけました。