本作が「トラウマ絵本」と呼ばれる決定的な要因は、子ども向け絵本の常識を覆す完全なバッドエンドと、徐々に侵食されていく日常の不気味さにあります。
ピーマンを食べてもらったことに味をしめたりょうたくんは、ニンジンやネギなど嫌いな食べ物を次々と小さなりょうたくんに食べさせます。それだけにとどまらず、苦手な片付け、嫌いなお風呂、退屈な勉強まで、「嫌なこと」をすべて小さなりょうたくんに丸投げするようになっていきます。
嫌なことを押し付けられるたびに、小さなりょうたくんは食べ物を吸収して徐々に巨大化していきます。その一方で、何もしなくなった本物のりょうたくんはエネルギーを失うかのように縮んでいき、ついに二人のサイズは完全に逆転してしまいます。
そして迎えるクライマックス。大きくなった「元・小さなりょうたくん」はりょうたくんの母親に「ごちそうさま!」と元気に声をかけ、本物のりょうたくんの日常を完全に奪い取ります。小さくなってしまった本物のりょうたくんが指先に乗せられ、「きらいな ものは、ぜーんぶ ぼくが たべてあげる」という言葉とともに、巨大な口の中へと放り込まれて絵本は幕を閉じます。救済措置が一切ない理不尽なまでの幕引きが、読者の脳裏に鮮烈な恐怖を刻み込むのです。