人参の肥大期において、追肥と同じくらい収穫物の品質を決定づけるのが「土寄せ」の精度です。追肥を与えた後、周りの土と肥料を混ぜ合わせながら株元に寄せる行為には、明確な栽培生理的理由が存在します。
人参の根頭部(クラウン)は肥大するにつれて土の上にせり出してきます。この部分が太陽光の紫外線に直接当たると、葉緑素が生成されて鮮やかなオレンジ色から変色する「青首(緑化)」現象が発生します。青首になった部分は筋っぽく硬化し、苦味やエグ味の原因物質が凝縮してしまうため、市場価値も大きく下がります。人参土寄せのやり方としては、成長点である葉の付け根を埋めないギリギリの高さまで、優しく土を盛り上げることが重要です。
また、人参又根の原因と対策の観点からも、土寄せの際の物理的刺激には配慮が必要です。人参の主根の先端にある成長点は極めてデリケートで、未熟な有機肥料の塊や小石、硬い土の塊に触れると成長点が分岐し、二股・三股の「又根」になります。追肥を施す際は株の真上からバラ撒くのではなく、必ず株元から5〜10cmほど離れた条間に撒き、周辺の柔らかな表土を被せるように土寄せを行ってください。