「知る」の肯定形以上にトラブルを引き起こしやすいのが、否定形である「知らない」の敬語処理です。「知りません」と言い放つと、ビジネス現場では「突き放された」「責任放棄された」と受け取られかねません。
否定形を用いる場合、物事に対しては「存じません」、人物に対しては「存じ上げません」を用います。さらに、ビジネスシーンでより洗練された印象を与えるテクニックとして、クッション言葉と「わかりかねます」の組み合わせが極めて有効です。
「あいにく私どもでは存じ上げない次第でございます」
「大変恐れ入りますが、その件に関しては私ではわかりかねます」
また、ネット上の一部記事で混同が見られるのが、「知る」と「承知する」の使い分けです。上司から指示を受けたり、取引先から条件を提示された際に、「その件は存じております」と返すと、単に「前から知っていた」という意味になり、相手の指示を【引き受けた・納得した】という意思表示になりません。
相手の要望や指示を理解・受託したことを伝える場合は、「知る」の敬語ではなく、「承知いたしました」「かしこまりました」への言い換えが不可欠です。言葉の機能が「情報の認知」なのか「意思の受諾」なのかを明確に切り分けなければ、業務連絡の齟齬につながります。