かつて中国各地で相次いだキャラクター模倣の代表例として、今なお多くの人々の記憶に刻まれているのが北京石景山遊楽園の騒動です。2007年、園内に掲げられた「ディズニーは遠すぎる、石景山遊楽園へどうぞ」という刺激的なキャッチコピーとともに、ミッキーマウスや白雪姫、さらには日本の人気ネコ型ロボットに酷似した着ぐるみが闊歩する光景は、国内外のメディアで大々的に報じられました。
追及を受けた園側幹部が「あれはディズニーのキャラクターではなく、耳の長いネコだ」と釈明した当時の会見映像は、模倣を正当化する象徴的な場面として世界中に配信されました。さらに2010年末には、四川省成都市のテーマパーク「国色天郷楽園」に、機動戦士ガンダムに極めて酷似した全高約15メートルの巨大ロボット立像が登場。国内外から猛烈な批判を浴びると、園側は立像を急遽ナイロンシートで覆い隠し、表面にトゲやツギハギのような突起パーツを付け足して「オリジナルデザインの天神紀元だ」と強弁した経緯があります。
なぜこのような事態が白昼堂々とまかり通っていたのか。その背景には、当時の中国社会を席巻していた「山寨(シャンジャイ)文化」と呼ばれる独自の商業倫理が存在していました。もともとは「山奥の砦」「政府の統制が届かない領域」を意味する広東語に由来するこの概念は、急速な市場経済化の波の中で「既存のヒット作を素早くコピーし、低コストで大衆に提供する抜け目ない適応力」として半ば肯定的に捉えられていた側面があります。
高度経済成長の初期段階において、地方政府は観光客の誘致や商業施設の集客によるGDP成長を最優先視し、知的財産権の侵害に対して極めて甘い姿勢を取り続けていました。開発スピードと目先の利益が何よりも重んじられ、「ゼロから時間をかけてブランドを育てるよりも、すでに認知度のある外資キャラクターに便乗するほうが遥かに合理的である」という歪んだ経済合理性が、粗雑なコピーキャラクターを次々と生み出す温床となっていたのです。