乳幼児期におけるふれあい遊び発達への効果と理由を語る上で欠かせないのが、脳科学と小児内分泌学の知見です。人間の皮膚は「露出した脳」とも呼ばれ、皮膚感覚を司る受容器は中枢神経系と密接につながっています。特に、秒速約5cmのゆっくりとした速度で肌を優しく撫でられた際に活性化する「C触覚線維」からの信号は、情動を司る大脳辺縁系や島皮質へと直接届きます。
この刺激によって脳内下垂体から多量に分泌されるのが、通称「愛情ホルモン」と呼ばれるオキシトシンです。オキシトシンは赤ちゃんのコルチゾール(ストレスホルモン)濃度を急速に低下させ、心拍数を安定させます。結果として赤ちゃんは深い安心感(基本的信頼感)を得て、外界の刺激を探求するための精神的土台を固めていくのです。
英国の精神分析学者ジョン・ボウルビィが提唱した「愛着理論(アタッチメント理論)」の観点からも、親の応答的なスキンシップは、自己と他者の境界を認識し、「自分は愛される存在である」という自己肯定感の原風景を形作ります。保育園の現場取材において、現役の乳児担当保育士は次のように証言しています。
「泣き止まない赤ちゃんをただ抱っこするだけでなく、目を見つめて手足をリズミカルにさすりながら歌いかけると、わずか数十秒で呼吸の乱れが収まり瞳の焦点が定まる瞬間を幾度も目撃してきました。言葉を話せない0歳児にとって、皮膚を介したコミュニケーションは言語以上の対話なのです」