ペーパードライバースクールや板金修理工場の現場を取材すると、外輪差による物損事故の生々しい実態が浮き彫りになる。
都内の出張ペーパードライバースクールで年間数百人を指導するインストラクターは、受講生が抱える共通の弱点について次のように証言する。
「受講生の方に車庫入れをしてもらうと、ほぼ全員がバックカメラの画面だけを凝視してしまいます。『ハンドルを切ると前が外側に膨らみますよ』と事前に注意しても、右にハンドルを切ってバックを始めた瞬間、左フロントのノーズが隣の車の側面に猛スピードで近づいていくことに気づかない。助手席の補助ブレーキがなければ、毎日数件の事故が起きているはずです」
また、インターネット上のコミュニティや知恵袋でも、後悔の念が綴られた投稿が後を絶たない。
「新車の大型SUVを納車された週末、狭いコインパーキングでバック駐車を試みた。バックモニターばかり見ていて、ハンドルを右いっぱいに切って下がった瞬間、左フロントのバンパー角が駐車場の鉄骨の柱に直撃した。センサーのアラートが鳴ったときにはすでに手遅れで、修理見積もりはセンサー交換を含めて24万円。教習所で内輪差は耳にタコができるほど習ったが、バックで前がこんなに外へ飛び出すなんて誰も教えてくれなかった」(30代男性・会社員)
大手損害保険会社の事故対応データによれば、駐車場内で発生する単独物損事故のうち、約3割が「旋回後退時におけるフロントバンパー角の接触」に関連しているという。この数字からも、外輪差がいかに日常的な運転に潜む罠であるかが窺える。