結論から言えば、何も対策を講じずにカーペットを敷きっぱなしにする行為は明確に「NG」です。この警告が住生活業界で繰り返される最大の理由は、畳という伝統建材が持つ特殊な物理構造にあります。
天然のい草で作られた本畳は、1畳あたり約500ミリリットルもの水分を蓄え、乾燥時にはその湿気を室内に放出する極めて優れた吸放湿機能を備えています。ところが、その表面を高密度な織物やゴム・合成樹脂裏地の敷物で密閉すると、行き場を失った水分がい草と床板の間に滞留します。特に近年の高気密・高断熱住宅では室内の湿気が外へ抜けにくく、床面の湿度は容易に80%以上へと達します。
カビ菌の胞子は湿度65%を超えると発熱・増殖をはじめ、75%を超えると爆発的な生育サイクルに入ります。さらに、そのカビをエサとするチリダニやコナダニが寄り付き、わずか数ヶ月で敷物の裏側が生態系の温床と化してしまうのです。畳を傷や汚れから「保護」するつもりで敷いたカバーが、皮肉にも畳の寿命を最も縮める引き金になるという物理的矛盾を理解しなければなりません。