文法書の中には「there is no ing = どんな動詞でも〜できないという意味になる」かのように単純化して記述しているものがありますが、これは学習者が抱きやすい危険な誤解です。
現代英語のコーパス(膨大な言語データ)を詳細に分析すると、「there is no ing」構文で実際に使われる動詞は、全体の90%以上が特定の認知的・知覚的動詞に限定されていることが判明しています。
具体的に使用可能なのは以下のような動詞群です。
- 情報・知識の認知: knowing, telling, predicting, mistaking
- 主張・議論の展開: denying, gainsaying, arguing, accounting for
- 不可避の状況: escaping, avoiding
物理的な具体的動作に対してこの構文を無理やり当てはめ、例えば「There is no swimming in this river(この川で泳ぐことはできない)」や「*There is no opening this door(このドアを開けることはできない)」と表現するのは、現代の英語ネイティブスピーカーにとっては極めて不自然で、意味が通じない誤用となります。
「物理的・能力的な不可能性」を表現したい場合は、素直に「You cannot swim in this river」や「It is impossible to open this door」を用いるのが鉄則です。この構文は、歴史的に決まったフレーズとして受け継がれてきた「半固定的なイディオム」であるという真実を認識しておくことが、不自然な英語を脱却するブレークスルーになります。