オフィスや家庭などの現場では、この「あくびの伝染」が対人関係の思わぬバロメーターとして機能しています。SNS上の投稿や企業のマネジメント現場で行われたヒアリングからは、リアルな人間模様が浮き彫りになっています。
大手IT企業でチームリーダーを務める30代男性の手記には、次のような現場の観察記録が残されています。
「新プロジェクトの立ち上げ当初、張り詰めた会議室で誰かがあくびをしても誰も連鎖しませんでした。しかし、数か月間苦楽を共にして心理的安全性が高まった頃、ひとりのあくびがバタバタと同僚たちに感染し、思わず全員で苦笑いしたことがあります。チームの一体感が生まれた瞬間を、あくびの伝染によって肌で実感しました」
一方で、SNS上には「パートナーにあくびがまったくうつらない時期があり、関係の冷え込みを感じていたが、単に相手が激務で疲弊しきっていただけだった」という声や、「知恵袋でサイコパス診断の噂を見て不安になり受診相談に来る人がいる」という心療内科医の証言も散見されます。無意識の生理現象であるからこそ、そこに過剰な意味付けをして人間関係の不安を募らせてしまうケースも少なくありません。