情報空間で根強く拡散されているのが、「食品交換表のような面倒な計算をせず、ご飯やパンなどの表1(炭水化物)をすべてカットすれば手っ取り早く治る」という極端な糖質制限論です。血糖値スパイクを防ぐ観点から一見魅力的に映りますが、糖尿病治療の現場では強い警戒感が示されています。
主食を極端に抜くと、人間はエネルギー不足を補うために肉や揚げ物などの表3(たんぱく質・脂質)や表5(油脂)を無意識に過剰摂取します。その結果、悪玉コレステロール(LDL)の急上昇や動脈硬化の進行を招き、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクを高める恐れがあります。さらに、ブドウ糖が枯渇すると体は筋肉を分解してエネルギーを作り出すため、骨格筋量が低下し、基礎代謝が落ちてリバウンドしやすい体質へと変化します。
特に高齢者の場合、過度な主食抜きは「サルコペニア(筋力低下症候群)」や低栄養に直結し、将来的な要介護リスクを跳ね上げます。食品交換表が表1の炭水化物を総エネルギーの50〜60%と厳格に規定している理由は、単なるカロリーの帳尻合わせではなく、血管と筋肉を守りながら持続的に血糖を安定させるための医学的防波堤だからです。