猫の肝臓数値が急上昇した際、獣医学的に最も警戒される代表的疾患が猫の肝リピドーシス(脂肪肝)と猫の胆管肝炎です。この2つの病態の理解が、猫の肝臓疾患と余命を大きく左右します。
肝リピドーシスは、特にふくよかな体型の猫が環境変化やストレス、他疾患をきっかけに「2〜3日以上まったく食べない」状態に陥ることでトリガーが引かれます。体内に入ってくるエネルギーが途絶えると、体は末梢の脂肪組織を激しく分解して肝臓へ送り込みます。しかし、猫は肉食動物ゆえに脂肪酸をエネルギーに変換・処理する代謝経路が独特で、処理能力をはるかに超えた脂質が肝細胞内に雪崩のように蓄積し、肝臓全体が急速に脂肪化・巨大化して機能不全に陥ります。放置した場合の死亡率は極めて高く、発症から数週間以内に衰弱死するリスクを抱えますが、早期に的確な経管栄養を行えば8割以上が回復するという特徴を持ちます。
一方の胆管肝炎は、猫特有の解剖学的構造が深く関与しています。猫は膵管と総胆管が合流して十二指腸に開口しているため、腸内細菌の逆流や炎症が「腸炎・膵炎・胆管炎」の3つへ同時に波及しやすい体質を持っています。臨床ではこれを「三領域炎(トライアディティス)」と呼びます。急性型では高熱や激しい腹痛を伴い、慢性型では無自覚のまま年単位で線維化が進行し、最終的には猫の肝硬変の末期症状である腹水の貯留、極度の低アルブミン血症、肝性脳症によるふらつきや痙攣へと移行していきます。一度肝硬変まで硬化した組織は再生が難しく、いかにその手前で食い止めるかが決定的な分岐点です。