ここからは、定期試験や大学入学共通テスト、国公立2次試験の記述で頻出する具体的な円のベクトル方程式の例題解説を通じて、確実な円のベクトル方程式の求め方を体得していきましょう。
【実践例題1】展開されたベクトル方程式の図形同定
【問題】 平面上の動点 $P(\vec{p})$ が、定点 $A(\vec{a})$ に対して次の等式を満たしながら動くとき、点 $P$ はどのような図形を描くか答えよ。
$$|\vec{p}|^2 - 2\vec{a} \cdot \vec{p} = 0 \quad (\vec{a} \neq \vec{0})$$
【解説・思考プロセス】
一見すると何を表しているのか分かりにくい式ですが、数学Iで徹底的に叩き込まれた2次関数の平方完成と同じ要領で式を変形します。目標は、基本形である $|\vec{p} - \vec{c}|^2 = r^2$ の形を作り出すことです。
左辺の $|\vec{p}|^2 - 2\vec{a} \cdot \vec{p}$ に着目すると、もしここに $+|\vec{a}|^2$ があれば、$|\vec{p} - \vec{a}|^2$ に因数分解できることに気付きます。そこで、等式の両辺に $|\vec{a}|^2$ を加えます。
$$|\vec{p}|^2 - 2\vec{a} \cdot \vec{p} + |\vec{a}|^2 = |\vec{a}|^2$$ $$|\vec{p} - \vec{a}|^2 = |\vec{a}|^2$$
両辺の平方根をとると(大きさは正であるため)、以下の方程式が得られます。
$$|\vec{p} - \vec{a}| = |\vec{a}|$$
この式が意味するのは、「動点 $P$ と定点 $A$ との距離が、常に線分 $OA$ の長さ($|\vec{a}|$)と等しい」ということです。したがって、求める図形は「点 $A(\vec{a})$ を中心とし、原点 $O$ を通る半径 $|\vec{a}|$ の円」となります。代数的な平方完成が、幾何的な円の定義式へと見事に着地した瞬間です。
【発展トピック】媒介変数表示と円のベクトル
円のベクトル方程式を語る上で欠かせないのが、三角関数を用いた媒介変数表示と円のベクトルの連携です。中心が原点で半径 $r$ の円周上の点 $P(\vec{p})$ は、偏角 $\theta$ を媒介変数(パラメータ)として以下のように表されます。
$$\vec{p} = (r\cos\theta, r\sin\theta) = r(\cos\theta, \sin\theta)$$
中心が点 $C(\vec{c})$ へ平行移動した場合、ベクトルの加法により $\vec{p} = \vec{c} + r(\cos\theta, \sin\theta)$ と記述できます。この表現は、物理学における円運動の軌道解析や、ベクトルの最大値・最小値を求める三角関数の合成問題へと直結する極めて強力な武器となります。