昭和ビニ本に「無修正」は実在したか?消滅の歴史と現在相場の真実

昭和ビニ本に「無修正」は実在したか?消滅の歴史と現在相場の真実

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ネット上の回顧録や掲示板などで頻繁に見られるもう一つの誤解が、「エロ本自動販売機に入っていた本はすべてビニ本である」という思い込みです。 実態は異なります。自販機のメイン商品として流通していたのは、ビニ本ではなく「自販機本」と呼ばれる中綴じの雑誌形式の出版物でした。ビニ本が1冊2,000円以上する高級ハードカバー・平綴じ写真集であったのに対し、自販機本は1冊500円前後のワンコインで購入できる低コストなペーパーバックでした。 自販機本は単なるグラビアだけでなく、当時のアンダーグラウンドな世相を反映したルポルタージュ、前衛的な漫画、読者投稿、カルト映画のレビューなど、極めて尖ったサブカルチャー記事が詰め込まれていました。後にメジャーな文筆家や編集者として大成した文化人たちが変名で原稿を執筆していたケースも多く、メディアとしての性質はビニ本とは大きく異なっていたのです。 「田舎の農道沿いにあった小屋の自販機で、ドキドキしながら買った」という昭和世代の原体験の多くは、実はビニ本ではなくこの安価な自販機本に向けられたものでした。この2つのメディアが頭の中で混ざり合った結果、「自販機で手軽に買えた無修正のビニ本」という、事実とはかけ離れたハイブリッドな虚像がネット上に定着していったのです。

佐藤 大輔
著者

佐藤 大輔

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