ドラッグストアで売られているシャンプーの多くが、なぜラウレス硫酸Naを避け、オレフィン(C14-16)スルホン酸Naを採用するようになったのか。そこには、2010年代以降に過熱した「サルフェートフリーブーム」と、メーカー側のコスト構造というマーケティング上の都合が色濃く影を落としています。
化学構造から見ると、ラウレス硫酸Naはポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムであり、分子構造内に「硫酸エステル結合(-O-SO3Na)」を持っています。対して、オレフィン(C14-16)スルホン酸Naは直鎖アルケンから合成されるアルキルスルホン酸塩であり、炭素原子に直接スルホン酸基が結合した「スルホン酸結合(-SO3Na)」を有しています。化学分類上、硫酸塩(サルフェート)ではないため、メーカーは「サルフェートフリー」「硫酸系界面活性剤不使用」と大々的に宣伝することが可能になります。
しかし、毛髪や皮膚に対する実際の物理的挙動という観点では、両者に劇的なマイルドさの差はありません。洗浄力、起泡力、脱脂力ともに非常に高く、皮脂を強力に落とす性質は極めて近似しています。一部の消費者や広告は「サルフェートフリーだから低刺激で安心」と思い込みがちですが、実際にはラウレス硫酸の代わりに同等以上の洗浄力を持つオレフィンスルホン酸を配合している製品が少なくありません。生分解性(環境中で微生物によって分解される速度)においてはオレフィン系が優位性を持つものの、肌へのマイルドさを期待してサルフェートフリー製品を選んだユーザーが裏切られたと感じる最大の要因がここにあります。