現在、古書コレクターやマンガ史研究者の視線が昭和後期の自主制作物へと注がれています。最大の要因は、昭和レトロ同人誌の歴史がそのまま「日本のポップカルチャーが世界を席巻する表現技法を獲得した実験場」であったという事実が、学術的・客観的に認知された点にあります。
市場データを見ると、その熱狂ぶりは数字に如実に表れています。老舗古書店「まんだらけ」が主催するオークション目録やヴィンテージ市場において、昭和エロ同人漫画プレミア価格は右肩上がりの推移を記録しており、1980年代初頭の伝説的なサークル誌には1冊10万円から30万円以上の落札値がつくことも珍しくありません。状態が極めて良好なものや、商業化前の著名作家が関わった初期作に至っては、海外の熱心なアートコレクターをも巻き込んだ争奪戦へと発展しています。
このような昭和同人誌高額買取の理由には、物理的な希少性が直結しています。当時の自主出版は、手回し式の謄写版(ガリ版)や簡易印刷機、あるいは少部数のオフセット印刷で刷られており、発行部数はせいぜい数十部から数百部程度に過ぎませんでした。さらに、当時の用紙は酸性紙が主流であったため、40年以上の歳月を経て黄ばみや崩壊が進んでおり、完全な状態で読める原本は年々市場から姿を消しています。「二度と手に入らない幻の生原資料」となったことが、骨董品にも匹敵する価格急騰を引き起こしている決定的な要因です。