コニーの人生における最大のトラウマであり、行動原理の根底にあり続けたのが、ウォール・ローゼ南区にある故郷「ラガコ村の悲劇」です。突如として壁内に巨人が出現した事件において、調査兵団が確認したのは、破壊されたコニーの実家の上に仰向けで倒れ、痩せ細った手足で起き上がれない1体の巨人でした。
当時の報道や作中考察でも衝撃を呼んだその真相は、マーレ軍戦士長ジーク・イェーガーの脊髄液を含んだ吸入ガスを村全体に散布され、ジークの「叫び」によって全村民が一瞬にして無垢の巨人に兵器利用されたという非道極まる軍事実験でした。あの動けない巨人はコニーの実母であり、息子の姿を微かに認識して発した「オ……カ……エ……リ……」という肉声は、彼に拭い去れない絶望を刻み込みました。
その後、地鳴らしが発動する混乱の最中、コニーは意識を失ったファルコ・グライスを連れ去り、母親に食べさせて「顎の巨人」を継承させることで人間に戻そうと画策します。この行動は一見すると暴走に見えますが、家族を理不尽に奪われた一人の少年としては極めて純粋で切実な動機でした。しかし、身代わりになろうと井戸へ飛び込もうとしたアルミンの決死の覚悟によって目を覚まします。「母親に誇れる兵士になりたい」という原初の誓いを思い出したコニーは、ファルコを犠牲にする凶行を自らの意志で踏みとどまりました。
最終的に母親が人間に戻れた理由は、誰かを捕食したからではありません。エレンが命を賭して巨人の力を根本から消滅させたことで、無垢の巨人化していた母もまた、奇跡的に元の肉体を取り戻したのです。最終話のエピローグでは、ヒストリア女王の手厚い保護のもと、母親が故郷で平穏に暮らしている事実が明かされており、コニーが背負い続けた最大の重荷はついに報われる結末を迎えました。