手話通訳士試験をめぐっては、ネット上でいくつかの誤った言説が流布しています。惑わされないために、冷徹なファクトを押さえておく必要があります。
誤解1:「手話検定1級を持っていれば通訳士もすぐ受かる」
全国手話検定試験1級や手話技能検定1級は「手話によるコミュニケーション能力」を測る民間検定です。一方、手話通訳士試験は「日本語と手話の双方向における同時・逐次通訳の専門技術」を審査する公的試験です。英会話が得意な人がプロの同時通訳者になれるわけではないのと同様、試験の性質が根本から異なります。
誤解2:「過去問の解答を丸暗記すれば実技も対応できる」
実技試験の課題文は毎回完全に新規で作成されます。過去問の映像と同じシチュエーションが出ることは二度とありません。問われているのは特定のパターンの暗記ではなく、初見の音声・映像に対して即座に適応できる基礎的な通訳プロセスの練度です。
【プロの結論】目指すべき人・慎重になるべき人の判断基準
手話通訳士という資格の重みと試験の過酷さを踏まえ、自分がこの道を進むべきかどうかの冷徹な判断基準を提示します。
- 目指すべき人:
- 日本語の文法構造や語彙力に深い関心があり、言葉の論理的解体が得意な人
- 自分の感情を完全に切り離し、中立公正な「黒子」として徹することができる人
- 不合格通知を受け取っても、自分の手話表現の欠陥を素直に受け止め修正できる客観性を持つ人
- 慎重になるべき人:
- 「聞こえない人を助けてあげたい」という情緒的な同情心や親切心だけで動いている人(心理的バウンダリーが崩れ、通訳に私情が混入するリスク大)
- 人前で手話を披露して感謝されることに自己承認欲求を見出している人
- 指導者からの表現の修正や厳しいフィードバックに対して感情的に反発してしまう人