観光資源の発掘と活用方法において、教科書的な成功を収めた代表例として知られるのが、長野県阿智村です。かつてバブル崩壊後の温泉街の衰退に苦しんでいた同村は、環境省による全国星空継続観察で「星が最も輝いて見える場所」第1位に選ばれたことを契機に、夜間の暗闇を主役にした「天空の楽園 日本一の星空ナイトツアー」を開発しました。
スキー場のゴンドラを活用して標高1,400メートルの山頂へ旅行者を運び、カウントダウンとともに照明を一斉に消灯する。それまで「夜は何の娯楽もない」と見過ごされていた暗闇が、年間数十万人を動員する屈指のキラーコンテンツへ昇華しました。オフシーズンだった春や秋の平日に宿泊客が押し寄せ、宿泊単価は急上昇を記録しています。
また、徳島県上勝町の事例は、環境負荷ゼロを目指す「ゼロ・ウェイスト」の精神そのものを観光資源へと進化させた先進例です。町内にあるゴミステーションやリサイクル拠点を核にしたホテルでは、アメニティを持参し、滞在中に自らゴミの分別を体験するツアーが国内外の視察者やエコツーリストを惹きつけています。
これらの事例が物語るのは、地方創生と観光まちづくりの成否は、莫大な予算を投じた施設建設ではなく、「地域特有の文脈をいかにストーリーとして磨き上げるか」にかかっているという動かしがたい現実です。