ろうあ者は漢字で「聾唖者」と表記され、読み方は「ろうあしゃ」です。「聾(ろう)」は耳が聞こえないこと、「唖(あ)」は口がきけないこと、すなわち音声言語を発声・発話できない状態を指します。英語の医学的表現である「deaf-mute」(耳が聞こえず口がきけない人)の訳語として明治以降の日本に定着し、かつては法制度や教育現場でも標準的な用語として用いられていました。
医学的・従来の定義において、ろうあ者とは「先天的または言語獲得前の乳幼児期に高度の聴覚障害を負った結果、音声言語の自然習得が困難になり、発話機能も十分に獲得できなかった人」を指していました。人間は他者の声や自分の声を耳でフィードバックしながら音声言語を習得するため、聴覚を完全に失っていると発声器官に身体的な異常がなくても、明瞭な音声を話すことが難しくなるという身体的メカニズムに基づいた分類です。
しかし、時代が進むにつれて発音訓練(口話教育)や補聴器、人工内耳などのリハビリテーション技術が発達しただけでなく、手話こそが彼らの完全な母語であるという認識が広がりました。発声器官そのものに麻痺があるわけではなく、手話という高度な視覚言語体系を用いて円滑な対話が可能である実態から、「口がきけない」と決めつけるような表現は実態にそぐわないという認識が急速に定着していったのです。