現場のライバーたちが置かれていた環境の過酷さも、一連の騒動の背景として見逃すことはできません。月間100時間を超える生配信、歌唱やイベントのリハーサル、グッズ監修、企業タイアップ案件など、人気ライバーの業務量は一般的な芸能人のそれをはるかに凌駕する水準に達していました。
2022年に活動休止を経て卒業を選んだアクシア・クローネ氏が、休止直前の配信で残した告白は、VTuberとリスナーの間に横たわる深い病理を告発するものでした。一部の過激なファンによる、他ライバーへの攻撃や「母親面」と呼ばれる過剰な指示出し、指示に従わない場合の執拗な誹謗中傷に対し、彼は「自分を肯定するために他人を傷つける行為はやめてくれ」と強い語気で訴えました。
生配信というフォーマットは、コメントを通じて視聴者と即時的・双方向につながる奇跡的な親密さを生み出します。しかしその親密さは、往々にして「私の思い通りに動くべきだ」という歪んだ所有意識(パラソーシャル・コントロール)へと反転します。ライバーが運営の方針に従えば「運営の操り人形」と叩かれ、独自のクリエイティブを貫こうとすれば「協調性がない」と指弾される。この逃げ場のない二重拘束(ダブルバインド)の中で、精神的な限界を迎えて活動休止や卒業へと追い込まれた事例は少なくありません。
画面上のアバターが笑顔を保ち続ける一方で、その裏側にある生身の人間は、24時間監視されるかのようなプレッシャーに晒されているという過酷な労働実態が、相次ぐ騒動の震源地となっていました。