田村正和という役者は、私生活を売りにすることを極限まで嫌った。自宅の敷居をカメラに跨がせることは一度としてなく、バラエティ番組で家族の日常をネタにすることすら一切拒否した。成城の閑静な住宅街を散歩する姿は目撃されても、隣に並ぶ妻や娘のプライバシーは鉄壁のベールで守られていたのだ。
役者としてのイメージを壊さないためのプロ意識。それが第一の理由だったことは疑いようもない。しかし、それ以上に一人の父親として、子どもに「有名人の娘」という重荷を背負わせたくないという切実な親心があった。オフの日、家族と過ごす時間だけは完全に「役者・田村正和」のスイッチをオフにし、静かな父親であり続けた。