1997年、社会を揺るがした神戸連続児童殺傷事件。事件の凶悪性もさることながら、人々に強い心理的ショックを与えたのは、犯人が自ら送りつけた声明文の存在だった。兵庫県警察や地元メディアを標的とし、自らを「酒鬼薔薇聖斗」と名乗った犯行声明は、言葉の選定だけでなく、その肉筆の質感そのものが異常な圧迫感を放っていた。
文字は一見すると整然と書かれているようでいて、随所に奇妙な角張りや突発的な筆圧の強弱が観察された。印刷物ではなく手書きという肉声に近い媒体を選んだ背景には、強い自己顕示欲と「見られること」への過剰な固執が存在していたと分析されている。手紙というアナログな手段でありながら、その視覚的強烈さは瞬く間に日本中のテレビ画面や新聞紙面を埋め尽くした。