実験走行の主役に抜擢されたのは、西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)から出張借り受けしたC56形蒸気機関車160号機だった。愛称「ポニー」として親しまれたこの小型蒸気機関車は、全国のローカル線で活躍した歴史を持ち、軽量ながら高い走破性を誇る名車である。
運行ルートは、ターミナルである名古屋駅からレゴランド・ジャパンやポートメッセなごやを擁する臨海部の金城ふ頭駅までの約15.2キロメートル。通常は最新鋭のステンレス電車が静かに往来する区間である。折り返し地点である金城ふ頭駅にはターンテーブル(転車台)が存在しないため、編成の最後尾にはディーゼル機関車(DE10形)を連結するプッシュプル形態が採られた。往路ではC56が先頭で力強く列車を牽引し、復路ではディーゼル車が主導する変則運用。都市の空中回廊を蒸気機関車が駆け抜ける姿は、鉄道ファンのみならず通りすがりの市民をも釘付けにした。