ネット上の掲示板やSNSでは、時折「『想い出の九十九里浜』は過去のGSのツギハギではないか」「パクリ曲だったのか」という短絡的な言説が見受けられます。しかし、これはポピュラー音楽における「パスティーシュ(作風模倣)」と「メタポップス」の文脈を無視した決定的な誤解です。
長戸大幸氏と織田哲郎氏が試みたのは、隠れて盗用する「盗作」の対極にある、元ネタをこれでもかと前面に押し出した「音楽的記号論」のエンターテインメントでした。ヒップホップにおけるサンプリングや、映画におけるクエンティン・タランティーノ監督の過去作引用と同様、過去の名作に対する深いリスペクトと該博な知識がなければ、これほど計算し尽くされたメロディと歌詞の構築は不可能です。
実際、元ネタとされたザ・タイガースやザ・スパイダースのオリジナルメンバーたちも、当時この楽曲を好意的に受け止め、テレビ番組等での共演を大いに楽しんでいました。後世のJ-POPに多大な影響を与えた「リバイバル・オマージュポップス」の最高傑作として位置づけるのが、音楽ジャーナリズムとしての公正な評価です。