平坦な格子状の街区が広がる行政区画、神戸市兵庫区福原町。この地名のルーツを遡ると、平安末期に平清盛が壮大な構想とともに造営を試みた「福原京」に辿り着く。かつて国の中心を目指した高邁な理想郷の記憶は、長い時を経て、港町の発展とともに独自の遊興空間へと姿を変えていった。
江戸の吉原遊郭が幕府の厳しい統制下で洗練された文化を育んだのに対し、福原の地は開港都市・神戸の活気と直結していた。海外からの船員や行商人、地元の職人たちが交錯するダイナミズム。都市構造論や社会学の文脈において、福原は「海に向かって開かれた色街」として、東日本の遊郭構造とは異なる独自の空間的変革を遂げたことが指摘されている。
戦後の赤線廃止令、高度経済成長期、そして阪神・淡路大震災という未曾有の災禍。幾多の試練を乗り越えて生き残ったこのエリアには、過去の遺構と現代の建造物が混在する独特の景観が今なお残されている。