なぜ大谷選手は、インフレリスクや貨幣の時間価値を犠牲にしてまで「97%後払い」という極端な条件を自ら球団側に提案したのでしょうか。その背景には、MLB特有のサラリーキャップ制度(ぜいたく税=CBT)のルールを逆手に取った徹底的な「勝利への執念」が存在します。
メジャーリーグでは、チーム総年俸が一定基準を超えると高額なペナルティ(ぜいたく税)が課され、ドラフト指名順の降格など戦力補強に厳しい制約が生じます。もし大谷選手が毎年7000万ドルの年俸を満額受け取っていた場合、球団のペイロールは圧迫され、他の有力選手を獲得する資金的余裕が失われていました。
しかし、支払いを遠い未来へ先送りすることで、現行の計算規定に基づき、球団のぜいたく税上の年間負担額を実質約4600万ドル程度まで圧縮させることに成功しました。これにより浮いた莫大な予算枠を活用し、ドジャースは山本由伸投手をはじめとする一流スター選手の相次ぐ獲得や、強力な救援陣・野手陣の大型補強を次々と実現させたのです。
「自分が受け取る現金を極限まで減らしてでも、常にワールドシリーズを制覇できる最強のチームを作ってほしい」という大谷選手のストイックな勝利至上主義こそが、この驚くべき契約を生み出した最大の原動力でした。