二所ノ関親方がここまで力士の身体管理と環境改善に心血を注ぐ背景には、自身の現役時代の壮絶な怪我と引退理由の真相が存在します。2017年春場所、新横綱として臨んだ13日目に左大胸筋および左上腕筋を断裂。満身創痍の状態で奇跡の逆転優勝を果たしたものの、その後の力士生命は長期にわたる休場と痛みに苦しむこととなりました。
当時の特番インタビューや手記において、親方は「無理を押して土俵に立ち続けた後悔と、横綱としての責任の狭間」で葛藤した生々しい胸中を吐露しています。自らが怪我によって相撲人生を縮めてしまった痛烈な教訓があるからこそ、「愛する弟子たちには決して同じ思いをさせない」という強い信念が現在の科学的コンディショニングの土台となっているのです。
また、親方の多忙な日々を精神的・生活面から支えているのが、結婚した妻(おかみさん)の存在です。表舞台に出しゃばることなく、裏方として部屋の若い力士たちの健康管理や細やかな生活相談に乗り、部屋全体を温かい家庭的な雰囲気で包み込んでいます。厳格な勝負の世界において、弟子たちが心から安心できる帰る場所を作っている点も、二所ノ関部屋の強固な結束力の秘密です。